サバクトビバッタというのはバッタの仲間なのですが、トノサマバッタしか知らない日本人には聞きなれないバッタといえます。

ところが中東地域やアフリカなどに住んでいる人々にとっては、大量に発生して農作物を食い尽くす悪魔のような存在として恐れられています。

ここでは、そんなサバクトビバッタの生態やその被害状況などについてご紹介いたします。

サバクトビバッタの生態

比較的大型のバッタ

サバクトビバッタは、バッタ科のバッタアジア・アフリカ・中東地域に生息しています。バッタの中では比較的大型のバッタといわれており、オスの体長が40〜50ミリでメスが50〜60ミリ程になります。

そうはいっても、日本でよく見かけるトノサマバッタは100ミリ程あるので、トノサマバッタよりも小さいバッタといえるのかもしれませんね。

1日当たりの飛行距離は100〜200メートル

サバクトビバッタは、風に乗って集団で移動する習性があります。おまけに風に乗るので、移動距離がかない広範囲に及んだり速度も相当早いといわれています。

具体的には、1日当たりの飛行距離は100〜200メートルもあり、移動する際の速度はほぼ風速に近い速度が出るといわれています。さらには飛行する高度も相当あり、海抜2000メートルにも達するといいます。そうした並外れた運動能力に関しては、通常のバッタの比ではありませんね。

孤群相・群生相という二つの相反する生態を併せ持つ

サクトビバッタは、小集団でのみ生活をしてあまり群れを成すことを好まない孤群相という習性があります。そのため、子供もあまり産まないので害は少ないようにも思えます。ところが、何らかのあるスイッチが入ると急変してしまうのです。

要するに、集団で行動しながら集団で子供を作るという群生相という相矛盾する習性を持っているのです。もちろんそんな行動をとった際には、農作物の被害も尋常ではありません。実に、不思議な生き物といえるでしょうね。

ココが危険!群れで行動しながら農作物を食い荒らしてしまう

蝗害(こうがい)の被害が多発

害虫が群れで移動して農作物を食い荒らす害を蝗害(こうがい)といいます。

このサバクトビバッタもその代表的な害虫で、アフリカや中東地域では蝗害が多発しています。とくに、アフリカや中東地域に多い砂漠地帯や半砂漠のような過酷な自然環境の中でも生息することができます。

おまけに砂漠地域にある限られた農作物や草木を食い尽くしてしまうので、緑色から真っ黒の状態になるといいます。大量に発生して大移動を繰り返すサバクトビバッタのことを、それらの地域の人々は黒い悪魔として恐れています。

聖書やコーランにも被害状況が記述されている

サクトビバッタの農作物への被害は相当なものなので、キリスト教の聖典でもある聖書やイスラム教の聖典・コーランなどにもその被害状況が記されています。

そうなるとまさに歴史性のある人類史に大きく関わってきた生き物といえるでしょうね。

そこで具体的な記述例を挙げてみると、旧約聖書の出エジプト記にはイナゴの大群がエジプト全土を襲ったと書かれています。あるいはヨハネの黙示録にも天使がイナゴの大群を率いて現れると書かれています。

この聖書に記されているイナゴというのは、まさにアフリカや中東地域に生息しているサクトビバッタのことを指しているといわれています。

サクトビバッタが好む農作物とは?

サクトビバッタは、自分の体重と同じ量の植物を食べるといいます。例えば植物の葉っぱだけ食べるという生き物がいますが、ことサクトビバッタに関しては葉・茎・鼻・果実など何でも食べてしまいます。

とくに農作物では、トウモロコシ・米・サトウキビ・大麦・野菜などが多いといいます。おまけにサクトビバッタに限らず、バッタの排泄物食物を腐らせてしまうともいわれています。人間の排泄物は、野菜の肥料になるのですが、ことバッタに関しては正反対なのですね。

まとめ

サクトビバッタの生態や被害についてご紹介してみました。日本では見慣れないバッタですが、世界に目を向けてみると、まさに害虫の中の害虫的な存在なのでしょうね。